機械学習モデルで板金加工プロセスを自動化

フォード・メキシコ、機械学習モデルで板金加工プロセスを自動化

背景

板金(シートメタル)加工は、自動車製造業の基本工程です。多様なコンポーネントを生み出すため、膨大な数のツール、ダイス、プロセスを組み合わせ最適な加工プロセスを採用することは、エンジニアの知識や経験、技術に大きく依存し、手間と時間のかかる作業です。 フォード・メキシコの経営陣は、社内の知識やベストプラクティスを把握し、最適な加工プロセスを迅速に選択する方法を探るため、5年にわたり金属プレス加工の成功例を記録しました。工場の効率や部品の品質向上、スクラップ削減、迅速な新入社員トレーニングなど、ビジネスにおける多くのメリットを享受する狙いです。

フォード・モーター・カンパニー社について

フォード・モーター・カンパニーは、Fortune 50の自動車メーカーで、世界中に工場を持ち、何百万台もの自動車を毎年生産しています。品質、効率、市場投入までのリードタイム、これらすべての改善が同社の収益性と売上成長に不可欠です。

フォード社は、製品開発のサポートのため30年以上にわたりAltairと連携しています。現在は、自動車だけでなく、トラック、重機の開発にもAltairのソフトウェアを採用しています。

課題

多くの生産現場では、プログレッシブ、トランスファー、タンデムプレスラインなど、入れ子になった個々の部品を成形するための板金加工方法が複数あります。ある部品のデザインに対して、素材の種類、厚み、部品の幅、必要な表面仕上げなど、最適、または最も効率的な加工方法を選ぶには多くの要因を考慮しなければなりません。

適切なプロセスの選択はエンジニアの経験値や専門知識に大きく依存するうえ、設計の複雑化、従来とは異なる材料の種類、多数のプロセスの組み合わせにより、経験豊富なプロセスエンジニアでも、労力はもちろん、材料を用いた試行錯誤の検証プロセスが必要となります。

材料の使用率は特に重要なベンチマークとされ、ほとんどの自動車工場における材料使用率は60%程度、残りの40%は無駄になっています。この数字を改善し、最初から適切な加工プロセスを選択してFTT率(First Time Through Rate、直行率)を高めることがフォード社の目標です。

フォード・メキシコ社は、成功した生産工程に関連する膨大なデータの文書化と蓄積に着手します。5年間にわたり、プロセスエンジニアが何千もの部品の加工プロセスを記録し続け、貴重なインサイトを得ましたが、このデータをどのように役立て、最適なプロセスを選択するかという課題は残ったままでした。

Altairのソリューション

Altairの機械学習および予測分析ソリューションKnowledge Studioの存在を知ったフォード・メキシコ社は、自社の専門家とAltairのチームで、収集した3000を超える加工プロセスのデータを用いてKnowledge Studioで正確で信頼性の高い機械学習モデルを開発しました。

Knowledge Studioには15種類の機械学習モデルが用意されており、ユーザーは自分のデータに最も適したモデルを探索、選択、学習させることができます。チームはデータのサブセットを使って、どのモデルが最も効果的かを検証しました。その結果、決定木モデルが90%以上の精度を示し、最も安定した結果を得ることがわかりました。その過程において、最適な加工プロセスを選択する上で最も重要な要素は、完成品の全体寸法と厚さ、という驚くべき貴重な発見がありました。これらの要素だけでは最終的な決定を下すのに十分ではありませんが、他のデータと組み合わせることで、機械学習アルゴリズムは100%に近い高精度の結果を提示しました。

結果

Knowledge Studioの機械学習による予測能力は精度が高く、加工プロセスの選択をほぼ自動化することができました。試行錯誤によるプロセスの検証や再作業を最小限に抑えることで、エンジニアの時間をより複雑な部品設計などにまわせるようになり、生産効率とビジネス価値をさらに高めることができました。

スループットは3倍にまで増加し、FTT率が向上して再作業時間を短縮、しかもこれらはリソースを増やすことなく達成されました。

さらに、Knowledge Studioの機械学習モデルは、フォード社内のノウハウを効果的に取り込み、新入社員トレーニングにおける学習曲線をスピーディーに伸ばすことにも貢献しました。