Ankers社

ブレーキに発生する熱と制動距離に関する検証



MotionSolveとAltair Activateの連成シミュレーション


車両が減速する際にブレーキに発生する摩擦熱は、ブレーキシステムにさまざまな悪影響を及ぼします。熱によるブレーキディスクの破損や摩耗、ブレーキ故障だけでなく、温度の上昇によって摩擦係数が変化し、制動距離が延びることがあります。

Ankers社は、シミュレーション、デザイン、開発のサービスを提供することにより、新製品の開発において顧客をサポートしています。他にも、ヨーロッパや中国の自動車OEMおよびティア1サプライヤー向けの電気自動車やICE車両、特殊スーパーカー、レーシングカーなどの特殊車両を専門とし、その開発に初期段階から携わっています。

Ankers社のエンジニアは、技術的に先頭に立つことを旨とし、最先端のツールと開発手法を使用しています。AltairのHyperWorksソフトウェア製品群は、Ankers社のツールセットの1つに選ばれ、2014年の創立以来シミュレーションチームで使用されています。構造解析や最適化作業を必要とするさまざまな分野で、多数のシミュレーションや開発プロジェクトに、このツールが使用されています。特にe-モビリティプロジェクトで多く使用されていますが、多様な側面での開発が必要となる、システム全体に関わるプロジェクトでも役立っており、連成シミュレーションとモデルベース開発のアプローチは、個別のアプリケーションを考慮するアプローチからは得られない解決策を提供してくれます。連成シミュレーションがAnkers社にとって重要なトピックとなったときに、エンジニアたちはソフトウェアプロバイダーから提供されるべきものは何かを考え、Altairに注目しました。

直近のプロジェクトで、Ankers社のエンジニアはブレーキシステムに与える熱の影響を検証しました。この検証のために、エンジニアたちはHyperWorks製品群のマルチボディダイナミクスツールのMotionViewと、1Dアプローチを使用して複合領域システムのシミュレーションと最適化を実行するAltair Activateの連成シミュレーションを行いました。この検証の目的は、連成シミュレーションを行い熱の影響を考慮することでシミュレーション結果がより精確になることと、連成シミュレーションに関するAnker社の実力を顧客に示すことでした。

「Altairは、我々の課題を解決するためのすべてのソリューションを提供してくれます。Altairのソフトウェアはどれも使いやすいですが、とりわけMotionView/Altair Activate間のインターフェースは非常に使い勝手の良いツールです。連成シミュレーションは、複雑なモデルを迅速にかつ手軽に検証するのに便利です。特に、e-モビリティはますます重要なトピックとなっており、絶えず革新を伴なっています。MotionViewには、サスペンションシステム用のテンプレート、タイヤモデル、アドバンスドドライバーなどの重要なライブラリが含まれているので、マルチボディシステムの作業が容易になり、時間を節約することができます」
Nicolò Indovina, Team Leader Vehicle Dynamics and Integration Specialist at Ankers

ソリューション - 開発プロセスにおけるMotionViewとAltair Activate


この検証で使用されたモデルは、車両全体モデルと、ブレーキディスクとブレーキパッドで構成されるブレーキシステムのモデルでした。これらのモデルはMotionViewに含まれている車両ライブラリのシステムテンプレートを使用して作成されています。ブレーキ操作時のエネルギー変換によって生じる熱の影響を検討するために、マルチボディシステムをActivateと連成シミュレーションさせ、制動距離におけるディスクとパッドの接触による温度の影響を検証します。連成シミュレーションを行うモデルは、MotionView(マルチボディシステムとアドバンスドドライバー)とAltair Activate(摩擦熱依存モデル)で設定されています。

MotionViewからライン圧力とホイール角速度をAltair Activateに入力し、Activateの熱モデルと油圧回路から摩擦係数を算出します。その結果を再びMotionViewに戻して、そのモデルのコンポーネントのプロパティを更新します。このシミュレーションでは、直線でのブレーキ操作を対象としています。また、使用するブレーキシステムは、実験データを利用してベンチレーテッド型にすることができますが、この事例では、非ベンチレーテッド型モデルを使用しました。

直線でブレーキ操作を行うために使用されたMotionViewの車両全体モデル

ブレーキ操作では、運動エネルギーは摩擦係数低下の原因となる熱に変換されます

結果とメリット / 今後の計画


連成シミュレーションで得られた結果から、ブレーキパッドの温度が上昇すると、摩擦係数が低下し、制動距離が延びることがわかりました。連成シミュレーションモデル(MotionView/Altair Activate)を解析した後、その結果を技術論文にある既存の複雑なモデルから得られる結果と比較して検証しました。

技術論文からの結果をMotionView/Altair Activateモデルに組み込んで、Ankersモデルを検証しました。その結果、(1Dは)3Dモデルと非常に良好な相関関係にあることがわかりました。次に、直線でのブレーキ操作(制動距離を示す)を解析し、温度による影響を考慮した場合は、このモデルでは車両が54mで停止し、この影響を考慮しない場合は、50mで停止するという結果となり、連成シミュレーションの結果はマルチボディシミュレーションのみで得られた結果に比べてより精確であることがわかりました。この4mもの差は、ブレーキシステムの開発において、温度がブレーキシステムに重要な影響を与えることを示しており、製品開発プロセスの初期段階でより精度が高い結果を得るには、温度による影響をプロジェクトのコンセプト段階で検討する必要があることがわかります。

この検証で得たすばらしい結果により、Ankers社は連成シミュレーションをサービスポートフォリオに組み込むことにしました。また、さらに、非常に簡単に“自然”な形でシステム全体を完成させるブロックダイアグラムモデルを組み込めることで、Altair Activateとマルチボディシステムが完璧な組み合わせであることも示しました。この方法により、エンジニアは慣れ親しんだシミュレーション環境のまま、これらのシステム的なアプローチを実行することができます。

次の段階では、今回使用した熱モデルを中心に検証予定です。油圧オイルの温度上昇(およびさらに詳細なモデルを作成するためのその他の影響因子)や、ブレーキシステム全体のパフォーマンスにどのように影響を及ぼすかを検討します。また、同じブレーキシステムでベンチレーテッドディスクの場合の解析も検証対象として考えられています。

About Ankers社

Ankers社は、イタリアのトリノ市に拠点を置く自動車産業および航空産業のダイナミックハイテクエンジニアサービス企業です。2014年に創立され、シミュレーション、デザイン、開発のサービスを提供することにより、顧客企業の新製品開発をサポートしています。

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